「生理痛で保健室」を見過ごさない|学校が知っておきたい月経困難症と子宮内膜症

毎月のように生理痛で保健室を訪れる生徒、体育を見学する生徒、月経のたびに欠席や早退をする生徒。

「生理痛はみんなあるもの」と見過ごされがちですが、その中には治療が必要な状態や、将来の妊娠に関わる病気が隠れていることがあります。

この記事では、学校で知っておきたい「月経困難症」の基礎と、受診につなぐポイントをまとめます。

月経困難症とは:「日常生活に支障が出る」生理痛

月経困難症とは、月経に伴う症状のために日常生活に支障が出ている状態を指します。

痛みの強さそのものより、「授業に集中できない」「登校できない」といった生活への影響がポイントです。

症状は下腹部痛だけではありません。

腰痛、頭痛、吐き気、おなかの張り、下痢、だるさ、食欲不振、イライラや気分の落ち込みなど、さまざまな形で現れます。

2つのタイプと、思春期に注意したい子宮内膜症

月経困難症は、大きく2つに分けられます。

タイプ 特徴 主な原因
機能性月経困難症 子宮や卵巣に、症状の原因となる明らかな病気がない 子宮を収縮させる物質(プロスタグランジン)など
器質性月経困難症 痛みの原因となる病気がある 子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫など

思春期の生徒で特に知っておきたいのが子宮内膜症です。

子宮内膜症は進行すると慢性的な痛みの原因になり、将来の妊娠に影響することもあります。

思春期から20歳代前半にみられる強い月経痛が、のちに子宮内膜症と診断されるケースもあります。

Janssenらが2013年に発表したシステマティックレビューでは、月経痛や慢性的な骨盤痛のために腹腔鏡検査を受けた思春期女性の62%に子宮内膜症が認められました。

特に、治療を行っても改善しない慢性的な骨盤痛がある人では、その割合は75%でした。

ただし、これらは症状が強く、腹腔鏡検査を受けた人を対象とした研究結果であり、すべての中高生に当てはまる数字ではありません。

いずれにしても、若い人の子宮内膜症は診断が遅れやすく、「若いから病気ではない」とは言い切れません。

受診を勧めたいサイン

次のような様子があれば、婦人科への受診を勧めてください。

  • 月経のたびに、欠席・早退・保健室での休養が必要になる
  • 市販の鎮痛薬を飲んでも痛みが治まらないときがある
  • 痛みが年々強くなっている
  • 月経のとき以外にも下腹部痛や腰痛がある
  • 吐き気やめまいで動けなくなることがある

主な治療法を知っておく

治療法を知っておくと、「病院に行っても痛み止めを出されるだけ」と思い込んでいる生徒や保護者に、具体的な見通しを伝えられます。

  • 鎮痛薬(ロキソプロフェン、イブプロフェンなど):痛みが強くなってからではなく、月経が始まったときや痛みを感じ始めた早い段階で飲むのがポイントです。なお、市販の鎮痛薬は製品ごとに対象年齢が決まっており、たとえば市販のロキソプロフェン製剤は15歳未満は服用できません。
  • 低用量ピル(LEP):毎日服用することで排卵を抑え、子宮内膜が厚くなるのを防ぎ、月経痛を改善します。月経の回数や経血量を減らす服用方法もあります。副作用や血栓症などのリスクを確認したうえで、医師が処方します。
  • ジエノゲスト:黄体ホルモンの作用を持つ薬で、卵巣の働きや子宮内膜の増殖を抑えることで、月経痛を改善します。服用中は月経が起こりにくくなりますが、不正出血が生じることもあります。
  • IUS(子宮内に装着する黄体ホルモン放出システム、商品名ミレーナ):子宮内に装着する器具で、黄体ホルモンを少しずつ放出し、月経痛や経血量を減らす効果があります。最長5年間使用でき、毎日の服薬は必要ありません。ただし、装着には婦人科での処置が必要で、年齢や子宮の状態などによって適応を判断します。
  • その他:当帰芍薬散や芍薬甘草湯などの漢方薬、子宮の収縮を抑える鎮痙薬が使われることもあります。

ホルモン剤を使用すると「将来妊娠できなくなるのでは」と心配する生徒や保護者もいます。

しかし、月経困難症の治療に用いられるホルモン剤は、通常、将来の妊娠能力を低下させるものではありません。

服用を中止すると、多くの場合、排卵や月経は再開します。

一方、子宮内膜症などの病気がある場合には、病気そのものが将来の妊娠に影響する可能性があるため、適切な診断と治療が大切です。

どの治療にも利点と副作用があり、「どの薬が一番よいか」ではなく、年齢や症状、病気の有無、生活スタイルに合わせて医師と相談しながら選ぶことが大切です。

学校でできること

  • 「我慢が当たり前」という空気を変える:保健の授業や保健だよりで、日常生活に支障がある生理痛は受診の対象になることを伝えます。
  • 保護者と情報を共有する:繰り返し保健室を利用している場合は、本人の同意を得たうえで保護者に受診を提案します。保護者自身が「生理痛は我慢するもの」と考えていることも少なくありません。
  • 婦人科は「相談だけ」でもいいと伝える:婦人科を受診したからといって、必ず内診(腟からの診察)を行うわけではありません。まずは症状について話を聞き、必要に応じて、お腹の上から行う超音波検査などを検討します。診察や検査の内容は、本人に説明し、相談しながら決めていきます。もちろん話を聞いて、必要な検査や治療の説明を受けるだけでも受診できます。

生理痛を我慢し続ける必要はありません。

学校が早めに気づいて受診につなぐことが、生徒の今の学校生活と、将来の健康の両方を守ることにつながります。

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監修

内田 美穂(産婦人科専門医/医療法人社団レースノワエ 理事長、フィデスレディースクリニック田町 院長、フィデスレディースクリニック上野 総括院長)

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