子宮内膜症・子宮腺筋症
子宮内膜症/チョコレート嚢腫
子宮内膜に似た組織が、なんらかの原因で、子宮以外の場所(卵巣、腹膜、肺、膀胱など)で発生・発育する病気です。特に卵巣に発生した子宮内膜症のことをチョコレート嚢腫と言います。卵巣で発生・発育した子宮内膜からは、月経のたびに出血が起こり、貯留してチョコレート様の液体を含んだ嚢胞となるためこのように呼ばれます。 生殖年齢女性の約7~10%に認められます。主な症状は月経困難症、排便痛、性交痛などの痛み症状と不妊です。エコー検査、MRI、腫瘍マーカー(CA125)で診断します。
治療
薬物療法と手術療法があります。薬物療法としては、鎮痛剤やホルモン剤が使用されます。すぐの妊娠を望まない場合は低用量エストロゲン・プロゲスチンを選択しますが、効果が不十分な場合や何らかのリスクで内服できない場合はプロゲスチン製剤(ジェノゲスト)が選択されます。レボノルゲストレル放出子宮内システム(ミレーナ)は子宮内膜症による痛みを軽減させる目的で使用されますが、病変そのものに対する効果については明らかではありません。
GnRHアゴニストによる治療もありますが、このお薬は女性ホルモン量を下げ、閉経の状態になるため、更年期症状や骨量の減少の副作用があります。また投与期間は6か月のみで治療終了後には再度病変が増大するため、長期的には使用できません。 手術療法は、薬物療法で痛みがコントロールできない場合と妊娠を考えている場合に検討されます。いずれの治療を受けても再発率が高いため、少なくとも閉経までの長期的な管理が必要となります。
子宮腺筋症
子宮の筋層内に子宮内膜組織が生じる病気です。30歳代後半から40歳代の経産婦さんに多くみられます。エコー検査で診断しますが、子宮筋腫との合併も多く、診断が難しい時はMRI検査も併用します。
症状
多くは無症状ですが、月経困難症、下腹痛、性交痛、過多月経、貧血、圧迫症状、不妊などの症状が出ることもあります。
治療
何らかの症状があれば治療の対象となります。子宮内膜症に準じた薬物療法が行われますが、その他、妊娠を希望されない方に対しては子宮動脈塞栓術(UAE)が選択されることもあります。子宮を栄養している動脈を塞いで血流を少なくさせる治療です。根治療法としては子宮摘出術が行われます。将来妊娠を希望される方の外科的治療として病変部だけ切除する手術方法もありますが、有効性と安全性が確立されておらず保険適応にもなっていません。